2025年10月29日 2025年10月31日
Q
入れ歯か?インプラント入れ歯か?オールオン4か? 3つを比較
A
・入れ歯で食事が美味しくない。
・入れ歯を外したところを見られたくない。
・入れ歯でなんだか年をとったような顔になった。
・入れ歯でも孫と同じような食事がしたい。
・入れ歯でも大きな声を出して思いっきり笑いたい。
・嘔吐反射があり、入れ歯を装着できない。
多くの患者さんが、歯を失って不満に思っている内容になります。
入れ歯とオールオン4が良く比較されますが、その他にも入れ歯インプラントという治療方法も選択肢としてあります。
皆さんは、どの治療方法を選択しますか?
目次
総入れ歯とは?
総入れ歯とは、歯が1本も残っていない方に装着する入れ歯のことを指します。
歯が1本でも残っている場合は、その歯にバネをかけて固定できるため、ある程度安定して噛むことができます。しかし、総入れ歯になると固定源がなくなるため、入れ歯が上下左右に動いてしまい、急に噛みにくくなるのです。
患者さんからは「歯が1本あるのとないのとで、こんなに違うのか」と驚かれることも少なくありません。これは決して珍しいことではなく、固定源を失った入れ歯がシーソーのように動いてしまうために起こる現象です。
ただし、人間には驚くほどの適応力があります。最初は動いていた入れ歯も、次第に舌や頬の筋肉がコントロールするようになり、少しずつ噛めるようになっていきます。時間をかけて慣れていくことで、生活の中でも総入れ歯を自然に使いこなせるようになるのです。
インプラント入れ歯とは?
インプラント入れ歯とは、少ない本数のインプラントを使って入れ歯を固定する治療法です。
インプラントに「ボタン」「バー」「磁石」などの装置を取り付け、そこに入れ歯を安定させます。
最大の特徴は、しっかり固定できるのに取り外しが可能な点です。食事のときは安定してよく噛め、夜寝るときには取り外して清掃できるため、衛生的に使うことができます。
従来はボタン式(アタッチメント式)が主流でしたが、現在ではボール型・バー型・磁石型など、さまざまなタイプが開発されています。
一般的には2~3本程度のインプラントで入れ歯を支えることが多く、全ての歯にインプラントを入れる方法に比べて、身体的・経済的な負担を抑えることができます。
オールオン4とは?
「オールオン4(All-on-4)」は、ポルトガルのDr.マローが開発した、革新的なインプラント治療法です。わずか4本のインプラントで、12本分の人工歯を支えることができるのが大きな特徴です。
動画のように4本のインプラントを骨に埋め込み、骨にしっかりと固定できれば、その日のうちに歯を固定することが可能です。そのため、患者さんは治療当日から見た目も機能も改善された状態で過ごすことができます。
オールオン4は、従来の「取り外し式入れ歯」と異なり、インプラントを支柱として固定するため取り外しが不要です。「総入れ歯が合わない」「短期間でしっかり噛める歯が欲しい」という方に適した治療方法といえます。
入れ歯や入れ歯インプラント
やオールオン4の費用・
値段相場比較
入れ歯、インプラント入れ歯、オールオン4の費用や料金を比較する際には注意が必要です。
なぜなら、歯科医院によっては治療費に再診料・検査費用・レントゲン費用などがすべて含まれている場合もあれば、これらが別途請求される場合もあるからです。そのため、ホームページや広告に掲載されている費用が安く見えても、実際にかかる総費用は異なることがあります。
したがって、サイト上に表示された金額だけで判断することはできません。
この点が、入れ歯・インプラント入れ歯・オールオン4の費用比較を難しくしている大きな要因です。
| 最低値段相場 | 最高値段相場 | |
|---|---|---|
| 入れ歯 | 330,000円 | 1,100,000円 |
| 入れ歯 インプラント |
1,100,000円 | 1,650,000円 |
| オールオン4 | 2,200,000円 | 4,400,000円 |
入れ歯やインプラントや
オールオン4の咀嚼力比較
咀嚼力=噛む能力になります。
これは断然オールオン4が有利となります。なぜならインプラントで入れ歯をしっかりと固定していますので、天然の歯に近い咀嚼力を得ることができます。
入れ歯は、天然の歯に比べて咀嚼力が1/4と言われています。ここで補綴・インプラントどちらも専門医として、論文を紐解いてみようと思います。
“インプラント補綴症例における咬合の評価”
ー片側遊離端欠損症例に
おけるインプラント補綴物と
部分床義歯の比較ー
中川晃成 木村欣史 一瀬暢宏 松岡建介 西村賢ニ 井原功一郎
この研究では、インプラントの患者満足度は機能的にもかなり天然の歯に近い評価がされています。なのでこの研究では、片側の欠損でインプラントと部分入れ歯で治療した場合の咬合状態を比較しました。
対象と方法
対象を、5つに分けました。
- 片側欠損奥歯にインプラント
- 片側欠損奥歯に部分入れ歯
- 片方総入れ歯で
反対は天然歯 - 上下総入れ歯
- 全部天然歯
上記5群の咬合力をオクルーザーを用いて調査しました。
結果
総咬合力は、全部天然歯が一番強く、続いてインプラント、部分入れ歯、総入れ歯でした。
考察
インプラントのかぶせ物と部分入れ歯の装着前後では、有意に咬合力が上がりました。
片側奥歯の欠損における補綴治療は、天然歯に近い咬合力の獲得、左右で均衡した咬合力の回復、残存歯の保護という観点から、部分入れ歯よりもインプラントの方が有効であることが示唆されました。
咬合の評価
結論
- 総咬合力(噛む力)は、部分入れ歯よりもインプラントの方が大きかった。
- 大臼歯の咬合力(噛む力)負担率は、部分入れ歯よりもインプラントの方が大きかった。
- かぶせ物をする最後方残存歯の負担率は、部分入れ歯で増加したのに対して、インプラントで減少した。
- 咬合バランスは、部分入れ歯では正常範囲外であったが、インプラントでは、正常範囲内であった。
入れ歯やインプラント入れ歯や
オールオン4の固定力比較
「固定力=維持力」といいますか、つまり「どれくらい外れにくいか」という点について比較してみたいと思います。
オールオン4の場合、インプラント体にネジでしっかり固定するため、基本的に動くことはありません。
インプラント入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)は、磁石・ボタン・クリップなどで固定される仕組みです。そのため、通常の使用では外れにくいものの、引っ張れば外れる構造になっています。
一方、総義歯(総入れ歯)は固定源がないため、外れやすい傾向があります。
固定力という観点だけで比較すると、オールオン4がネジ固定で最も強固ですが、固定力が強い分、インプラントに負担がかかりやすいため、就寝時のナイトガードは必須となります。
入れ歯やインプラント入れ歯や
オールオン4清掃性比較
清掃性で最も優れているのは「入れ歯」です。
入れ歯は簡単に外して洗うことができ、夜間は入れ歯洗浄剤に浸けてお手入れできます。そのため、介護の場面でも清掃がしやすいという利点があります。
インプラント入れ歯(インプラントオーバーデンチャー)も取り外し可能です。食後にすぐ洗うことができますが、ボタン・バー・磁石などの装置部分は歯ブラシで丁寧に清掃する必要があります。装置に汚れが残ると、インプラント周囲炎が起こり歯肉が腫れてしまうことがあります。とはいえ、取り外せる構造なので汚れを落としやすいメリットはあります。
一方、オールオン4は患者さん自身で外すことができません。
そのため、口腔内で汚れを落とす必要があり、特にウォーターピック(水流洗浄器)の使用がおすすめです。
毎食後に使用して汚れを洗い流すことが大切です。清掃が不十分だと、少ない4本のインプラントのうち1本が歯周病になり、残りのインプラントにも影響してしまいます。また、歯ぎしり・食いしばりを防ぐため、ナイトガードの装着も必須となります。オールオン4は、日常的にしっかりと清掃・管理できる方に向いています。
以上のことから、清掃のしやすさでいえば入れ歯が最も優れています。
ただし、患者さんの希望・年齢・日常のお手入れ習慣によって適した治療法は異なりますので、主治医とよく相談して選択することが大切です。
入れ歯やインプラント入れ歯や
オールオン4耐久性比較
耐久性、いわゆる「寿命」についてご説明します。使用する材料によって大きく異なりますが、最も耐久性が高いのはジルコニアです。オールオン4のかぶせ物や、入れ歯の人工歯に用いられることがあります。
ジルコニアは非常に丈夫な素材ですが、その硬さゆえに対合歯(かみ合う歯)を傷つける可能性が指摘されていました。現在では改良が進み、その点も改善されています。
入れ歯の耐久性は、保険診療で使われるプラスチック製か、自費診療で使われる金属製かによって異なります。
一般的に、金属を用いた入れ歯は耐久性が高く、平均して5年以上使用されることが多いです。
一方、インプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)は耐久性にやや難があるといわれています。
理由は、磁石・ボタン・バーといった装置部分に力が集中しやすく、破損や摩耗が生じやすいためです。
入れ歯やインプラント入れ歯や
オールオン4の発音比較
発音は、多くの患者さんが気にされるポイントです。
実際に「大きな声で笑いたい」「歌いたい」と希望される方も少なくありません。そのため、治療後の発音について不安に思われるのは自然なことです。
入れ歯やインプラント義歯(インプラントオーバーデンチャー)は、基本的に構造が似ており、どうしても入れ歯の厚みの分だけ発音がしにくくなります。とはいえ、多くの患者さんは日が経つにつれて慣れ、次第にスムーズに発音できるようになります。
実際に、最初は「話しにくい」と感じていた方も、時間の経過とともに正常な発音が可能になっていきます。
一方、オールオン4は上あごの入れ歯のように口蓋(上あごの裏側)を覆う部分がありません。これは発音において非常に大きなメリットです。
天然の歯があった頃と同じようにクリアな発音が可能であり、また入れ歯のように動いたり外れたりする心配もありません。そのため、舌で入れ歯を安定させる必要もなく、発音に関しては天然の歯に近い状態といえるでしょう。
まとめ
入れ歯かインプラント入れ歯かオールオン4か?どの治療方法を選ぶのか?非常に迷うと思います。なぜなら患者さんによってどの治療方法が合っているのか?が全然違うからです。まずは、自分が求めているのは何なのか?を明確にする必要があります。全てがパーフェクトな治療はありません。
例えば、普段から歯ブラシが苦手で、あまり上手に磨けない方がオールオン4が希望となってくると治療後にインプラントが歯周病になりグラグラするのが想像できます。オールオン4を望まれるのであれば、今まで以上に歯ブラシやクリーニングに時間を費やす必要があります。
田中 健久
Takehisa Tanaka
入れ歯なんでも相談室をご覧頂きありがとうございます。渋谷にて開業して20年以上経ち、多くの患者さまにご来院頂いたことを感謝申し上げます。
私は、日本補綴(かぶせ物・入れ歯)歯科学会と日本口腔インプラント学会の両方の専門医を取得しています。そのため入れ歯とインプラント両方の専門医として皆さんの相談に答える事ができます。両方の学会の専門医を取得している歯科医師は、非常に稀です。
よくインプラントは良くない!入れ歯は噛めない!などとおっしゃりますが、私の意見としては、それぞれ利点・欠点があり、患者さまによって全然違います。なのでそれぞれ自分に合った治療方法は、何かを理解した上で治療方針を決定すべきだと考えております。
両サイドから相談にのる事ができますので、どうぞお気軽に相談してください。
【所属学会・資格】
- 日本補綴歯科学会 専門医
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- 日本顎咬合学会 咬み合せ認定医
- 日本歯周病学会
- 日本臨床歯周病学会
- *スタディグループ
- 5DJapan-DentureCourseSaporter
【経歴】
- 1999年:岩手医科大学卒業
- 2004年:東京医科歯科大学大学院卒業
- ニューヨーク大学インプラント審美卒後研修修了
- ペンシルバニア大学卒後研修修了
- テンプル大学大学最新歯科治療コース修了
- ブカレスト大学医学部インプラント科卒業
- ハーバード大学インプラントプログラム修了
- いいやま歯科医院:勤務
- 青山通り歯科タナカ:院長
- 渋谷歯科タナカ:院長
- 医療法人社団まる歯:理事長
