2026年02月04日 2026年02月09日
Q
安い入れ歯と高い入れ歯って
何が違うの?
A
Q:安い入れ歯と高い入れ歯って
何が違うの?
A:「安い入れ歯と高い入れ歯って、何が違うの?」多くの患者さんが、そう疑問に思われていると思います。
入れ歯専門医の立場からすると、「そんなの、全然違うに決まっているじゃないですか」と思ってしまうのが正直なところです。
しかし患者さんからすれば、見た目も似ているし、説明を聞いても違いがよく分からず、「とりあえず保険の安い入れ歯でいいかな…」と思ってしまうお気持ちも、とてもよく分かります。
そこで今回は、安い入れ歯(保険の入れ歯)と高い入れ歯(自費の入れ歯)は、いったい何がどう違うのか?について、できるだけ分かりやすく解説していきます。
入れ歯専門医に
「安い入れ歯と高い入れ歯の
一番の違いは何ですか?」
というアンケートを実施しました
安い入れ歯と高い入れ歯の
一番の違いは「時間」
入れ歯専門医にアンケートを行ったところ、「安い入れ歯と高い入れ歯の一番の違いは何ですか?」という質問に対し、ほとんどの専門医が「時間」と回答しました。
材料の違いでも、作り方の違いでもなく、一番の違いは「どれだけ時間をかけて作られているか」という答えです。
実際、私自身も患者さんから「保険の入れ歯と自費の入れ歯は何が違うのですか?」と聞かれたら、やはり「時間です」と答えると思います。
渋谷歯科における「保険の入れ歯」と
「自費の入れ歯」の違いは?
当院では、以下の大きな違いがあります。
| 安い入れ歯(保険) | 歯科技工所に 依頼して作製 |
|---|---|
| 高い入れ歯(自費) | 私自身が模型作りから設計、調整まで時間をかけて作製 |
つまり、入れ歯そのものにかける“作製時間”がまったく異なります。
歯科技工士は
患者さんの顔や口を見ていない
ここで、ぜひ患者さんにも知っていただきたい事実があります。
保険の入れ歯を作る歯科技工士さんは、患者さんのお顔も、お口の中も、直接見たことがありません。
限られた情報をもとに、「こうだろう」「おそらくこうだろう」と想像しながら作製するため、どうしても限界があります。
これは、美容師さんや理容師さんが、顔を見ずに似合う髪型を作るようなものと言えば、分かりやすいかもしれません。
保険の入れ歯が
短時間・低価格で作られる現実
保険診療では、
歯科技工士さんは、以下を求められます。
- 非常に低い技工料金
- 短時間での仕上げ
結果として、保険の入れ歯の製作は経験の浅い歯科技工士が担当するケースが多いという現実もあります。
これは歯科技工士業界に限らず、どの業界でも「低価格の仕事は新人が担当する」という構造と同じです。
自費の入れ歯では
「考える時間」を惜しみません
一方、自費の入れ歯では、私は患者さんのお口とお顔を直接拝見し、以下をじっくり考え、時間をかけて選択します。
- どのような設計が最適か
- どの材料が合うか
- 噛み合わせはどうすべきか
必要に応じてレントゲンなどの診断ツールも活用し、根拠を持って入れ歯を作製します。
入れ歯専門医として伝えたいこと
安い入れ歯が「悪い」、高い入れ歯が「必ず良い」という話ではありません。しかし、「どれだけ時間をかけて、誰が、どのように作っているか」 ここに、安い入れ歯と高い入れ歯の決定的な違いがあります。
入れ歯選びで後悔しないために、ぜひこの「時間の違い」を知っていただければと思います。
実際にどんなところに
時間をかけますか?
模型分析・診断に時間をかけます
模型診断とは?
私は、いきなり入れ歯の型取りを行うのではなく、まず簡単な型を採って模型を作り、患者さんのお口の状態を「外に出して」じっくり観察します。
模型を前にして、以下のような多くの疑問を模型に投げかけ、原因を一つひとつ整理しながら答えを導き出します。
- なぜ、この患者さんは噛めないのか?
- なぜ、この部分だけ
骨が極端に吸収しているのか? - なぜ、入れ歯が何度も壊れてしまうのか?
安い入れ歯(保険)との大きな違い
安い入れ歯(保険)の場合、この模型分析・診断の工程は基本的に行われません。
一度で最終的な型取りを行い、そのまま入れ歯の作製に進んでいきます。
そのため、以下を十分に分析する時間が取れず、この時点ですでに「作製にかける時間」に大きな差が生まれます。
- 噛めない原因
- 壊れる原因
- 痛みが出る理由
なぜ模型分析が重要なのか?
入れ歯は、「形が合っていれば良い」「入れば良い」というものではありません。
噛み合わせ、骨の状態、力のかかり方を理解せずに作ると、以下といったトラブルにつながります。
- 痛い
- 噛めない
- 壊れやすい
だからこそ私は、模型を使った分析と診断に、しっかり時間をかけることを何よりも大切にしています。
お顔の分析に時間をかけます
患者さんのお顔は、一人ひとりすべて違います。そのため、入れ歯も「誰にでも同じ形」で良いわけではありません。
私は、その方のお顔に合った入れ歯を作製することをとても大切にしています。
実は、「入れ歯が噛めない理由」や「違和感が取れない原因」が、お顔のバランスに隠れていることも少なくありません。
そのため、写真に収めたお顔をもとに、正面・横顔の両方から、しっかりと分析を行います。
正面から見た印象と、横から見た印象は大きく異なり、その違いを理解した上で、それぞれのお顔に調和する入れ歯を設計していきます。
安い入れ歯(保険)との違い
安い入れ歯(保険)では、この「お顔の分析」という工程はありません。
型取りを行い、そのまま入れ歯の製作に進む、いわば“ぶつけ本番”の形になります。
また、保険の入れ歯を作製する歯科技工士さんは、患者さんのお顔を実際に見たことがありません。そのため、お顔に合った歯並びや形を再現することには限界があります。
「保険でも考慮してくれないのですか?」という質問について
「田中先生は、保険の入れ歯でもお顔を考慮して作ってくれるのではないですか?」とご質問をいただくこともあります。
お気持ちはとてもありがたいのですが、現実的には、そこまでの時間を保険診療で確保することは難しいというのが正直なところです。
時間をかけて分析し、設計し、調整を重ねる。このプロセスこそが、自費の入れ歯との大きな違いになります。
入れ歯の型を採る
「トレー」に時間をかけます
入れ歯専門医の多くは、患者さん一人ひとりに合わせた「個人トレー(専用トレー)」を作製してから、型取りを行います。
歯科では、型を採ることを「印象(いんしょう)」と呼びます。
入れ歯治療の世界的権威であるカール・O・バウチャーは、「入れ歯治療は印象に始まり、印象に終わる」という言葉を残しています。
それほど、型取り(印象)は入れ歯治療において重要な工程なのです。
なぜトレーが重要なのか?
精密な印象を採るためには、どのようなトレーで型を採るかが極めて重要になります。
このトレーを、どこまで最終的な入れ歯の形に近づけられるか、お口の形や動きをどこまで考慮できているかは、歯科医師の経験と知識によって大きく左右されます。
トレーの完成度が高いほど、その後に作る入れ歯の精度も自然と高くなります。
安い入れ歯(保険)との決定的な違い
安い入れ歯(保険)の場合、この「個人トレーを作製する工程」は基本的に行われません。
既製のトレーを使って、いきなり最終的な型取りを行うため、以下を正確に反映することが難しくなります。
- 粘膜の動き
- 力のかかり方
- 細かな形の違い
その結果、最初から精密な入れ歯を作ることができないという差が生まれてしまいます。
専門医として大切にしていること
私は、「まず良い型取りをすることが、良い入れ歯への近道」だと考えています。
だからこそ、入れ歯の型を採るためのトレー作製に、しっかりと時間をかけるこの工程を決して省きません。
入れ歯の「歯並べ」に時間をかけます
私は、入れ歯の歯を歯科医師である私自身が並べています。
通常、入れ歯の歯並べは歯科技工士さんが行います。しかし歯科技工士さんは、患者さんのお口の中やお顔を実際に見たことがありません。
これは歯科技工士さんの技術の問題ではなく、制度上どうしてもそうなってしまう現実です。限られた情報をもとに歯を並べるため、とても難しい作業になります。
歯科医師が歯を並べる理由
患者さんのお口の中とお顔を実際に見ている歯科医師が、歯を並べることができるのであれば、それに勝るものはないと私は考えています。
ただし、多くの歯科医師は、入れ歯の歯を自分自身で並べた経験がありません。
これは決して特別なことではなく、それが現在の歯科医療の「普通」です。
そのため、私が自分で歯並べを行っていると、同僚の歯科医師から「何をしているんですか?」と聞かれることもあるほどです。
なぜ、そこまでこだわるのか
私は、患者さんのお顔に合い、噛み合わせに調和した入れ歯を作るためには、歯科医師自身が歯並べを行うことが最善だと考えています。
歯の並び一つで、以下は大きく変わります。
- 噛みやすさ
- 見た目の自然さ
- 入れ歯にかかる力のバランス
安い入れ歯(保険)との違い
安い入れ歯(保険)では、ここまで時間をかけて歯並べを行うことはできません。
そのため、以下といった点で、大きな差が生まれてくるのです。
- 見た目
- 噛み心地
- 壊れやすさ
以下も参照してください。
保険と自費の入れ歯の違い噛み合わせの調整に時間をかけます
入れ歯が完成したあと、私が最も時間をかけるのが「噛み合わせの調整」です。
この調整方法は、「リマウント法」とも呼ばれています。
リマウント法とは、一度お口の中で正確な噛み合わせを採得し、その情報をもとに、
入れ歯をお口の外で噛み合わせ調整する方法です。
なぜ、お口の外で調整するのか?
お口の中での調整は、以下のような点があり、どうしても精密な調整が難しくなります。
- 唾液
- 粘膜の動き
- 頬や舌の影響
一方、入れ歯をお口の外に出して調整することで、これらの影響を受けず、細かな噛み合わせまで正確に調整することが可能になります。
その結果、以下といった、満足度の高い入れ歯につながります。
- 噛みやすい
- 痛みが出にくい
- 入れ歯に無理な力がかかりにくい
安い入れ歯(保険)との違い
安い入れ歯(保険)の場合、このリマウント法は行われません。
そのため、以下の方法が一般的です。
- お口の中で噛んでもらい
- 強く当たる部分だけを削って調整する
もちろん最低限の調整は行いますが、精密な噛み合わせ調整には限界があります。
専門医として大切にしていること
噛み合わせは、入れ歯の「使い心地」「壊れにくさ」「長持ち」すべてに直結します。
だからこそ私は、完成後の噛み合わせ調整に、しっかりと時間をかけることをとても大切にしています。
まとめ
なぜ時間が入れ歯の質を左右するのか?
入れ歯は、時間をかければかけるほど、良いものに近づきます。
もちろん、無限に時間をかけられるわけではありません。しかし、入れ歯の完成度は、以下といった一つひとつの工程に、どれだけ時間を割けるかで大きく変わります。
- 診断
- 設計
- 調整
安い入れ歯(保険)の場合、制度上どうしてもかけられる時間が極端に短く工程も必要最低限に限られます。
私たち歯科医師としては、「もっと時間をかけて診たい」「もっと丁寧に作りたい」と思っていても、じっくり取り組むことが難しいのが現実です。
一方、自費の入れ歯では、以下といった工程に、十分な時間をかけることができます。
- 模型分析
- お顔の分析
- トレー作製
- 歯並べ
- 噛み合わせ調整
- 噛みやすさ
- 痛みの出にくさ
- 壊れにくさ
- 見た目の自然さ
入れ歯選びで迷われている方には、ぜひ「この入れ歯には、どれだけ時間がかけられているのか?」という視点も、参考にしていただければと思います。
田中 健久
Takehisa Tanaka
入れ歯なんでも相談室をご覧頂きありがとうございます。渋谷にて開業して20年以上経ち、多くの患者さまにご来院頂いたことを感謝申し上げます。
私は、日本補綴(かぶせ物・入れ歯)歯科学会と日本口腔インプラント学会の両方の専門医を取得しています。そのため入れ歯とインプラント両方の専門医として皆さんの相談に答える事ができます。両方の学会の専門医を取得している歯科医師は、非常に稀です。
よくインプラントは良くない!入れ歯は噛めない!などとおっしゃりますが、私の意見としては、それぞれ利点・欠点があり、患者さまによって全然違います。なのでそれぞれ自分に合った治療方法は、何かを理解した上で治療方針を決定すべきだと考えております。
両サイドから相談にのる事ができますので、どうぞお気軽に相談してください。
【所属学会・資格】
- 日本補綴歯科学会 専門医
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- 日本顎咬合学会 咬み合せ認定医
- 日本歯周病学会
- 日本臨床歯周病学会
- *スタディグループ
- 5DJapan-DentureCourseSaporter
【経歴】
- 1999年:岩手医科大学卒業
- 2004年:東京医科歯科大学大学院卒業
- ニューヨーク大学インプラント審美卒後研修修了
- ペンシルバニア大学卒後研修修了
- テンプル大学大学最新歯科治療コース修了
- ブカレスト大学医学部インプラント科卒業
- ハーバード大学インプラントプログラム修了
- いいやま歯科医院:勤務
- 青山通り歯科タナカ:院長
- 渋谷歯科タナカ:院長
- 医療法人社団まる歯:理事長
