「毎日しっかり歯を磨いて、定期検診にも通っているから大丈夫」そう思っている方は、とても多いです。
しかし実は、これは半分正解で半分間違いです。
本当の問題は「力」
歯は“汚れ”だけでなく、“力”でも失います。
どんなに丁寧に歯ブラシをしていても、定期的にクリーニングを受けていても 、歯ぎしり・食いしばりの力をコントロールできていないと、歯は失われます。
目次
厚生労働省が2025年7月に発表したデータによると、2024年の日本人の平均寿命は、女性87.13歳、男性81.09歳となっています。
また、健康寿命(介護を受けずに自立して生活できる期間)は、女性75.45歳、男性72.57歳と報告されています。
これだけ寿命が延びた現代では、これまでと同じ歯科医療の考え方では不十分です。
これからは「長く使うこと」を前提にした「汚れ」+「力」の両方を守る治療が求められる時代になっています。
Per-Ingvar Brånemarkの研究データでは、歯を失う原因は「虫歯」「歯周病」だけでなく歯根破折(歯の根が割れること)が非常に多いとされています。
大きな原因のひとつが、歯ぎしり・食いしばりです。
これまでの歯科医療は、プラークコントロール(汚れの管理)=歯ブラシ中心でした。
しかしこれからは、フォースコントロール(力の管理)=噛む力・食いしばりのコントロールが必要不可欠になります。
本来、私たちの歯は、食事の時以外は接触していません。
しかし現代では以下のような影響などにより無意識に歯が接触する時間が増えています。
その結果、歯ぎしり・食いしばりが増加し、以下のような問題を引き起こします。
近年はストレスの影響もあり、歯ぎしり・食いしばりで来院される患者さんが増加しています。
対応は「昼」と「夜」で違います。
歯ぎしり・食いしばりは、「寝ている時(睡眠時)」「起きている時(覚醒時)」で原因が異なります。
そのため、それぞれに合った対策が必要です。
具体的な対策は、以下の通りです。
「毎日しっかり歯を磨いて、定期検診にも通っているから大丈夫」そう思っている方は、とても多いです。
しかし実は、これは半分正解で半分間違いです。
歯は“汚れ”だけでなく、“力”でも失います。
どんなに丁寧に歯ブラシをしていても、定期的にクリーニングを受けていても 、歯ぎしり・食いしばりの力をコントロールできていないと、歯は失われます。

第2回 永久歯の抜歯原因調査
平成30(2018)年11月
公益財団法人 8020推進財団
歯ぎしり・食いしばりによって、「歯にヒビが入る(マイクロクラック)」「歯の根が割れる(歯根破折)」ため、最終的には抜歯になるケースも少なくありません。
こんな経験ありませんか?
これ、ほとんどの場合、歯ぎしり・食いしばりが原因です。
これまでの歯科医療はプラークコントロール(汚れ)中心でした。
しかしこれからはフォースコントロール(力の管理)も必須です。
食事・会話・飲み込み・呼吸などは、すべて目的がある正常な動きです。
一方で歯ぎしりは、特に必要がないのに歯をこすり合わせたり、強く噛んだりする動きです。
専門的に言うと歯と歯が接触した状態で、咀嚼筋(噛む筋肉)が繰り返し働いてしまう状態を指します。
歯ぎしりは、起きている時と寝ている時で分かれます。
普段の生活でも、食事や会話で歯には力がかかっています。
そこに歯ぎしり・食いしばりの強い力が加わることで、歯や顎にかかる“力の総量”が増えていきます。
人の体には、耐えられる力の限界(許容レベル)があります。
これを超えると、「起こるトラブル」「さまざまな問題」が起こります。
つまり歯ぎしりは“静かにダメージを蓄積する原因”です。
日本では、歯を失う3大原因として、「歯周病」「虫歯」「破折(歯が割れること)」が報告されています。
歯の喪失は40代後半から増え始め、70代までに平均12.5本を失うと言われています。
そしてこの年代で歯を失う主な原因は歯周病と破折(歯が割れること)です。

第2回 永久歯の抜歯原因調査
平成30(2018)年11月
公益財団法人 8020推進財団
では、なぜ歯が割れてしまうのでしょうか?
最大の原因は、歯ぎしり・食いしばりなどの”力”です。
しっかり磨いていても、力で歯は失われます。
歯の汚れ(プラーク)をしっかり管理していても力のコントロールができていなければ、歯は守れません。
歯を守るには、“汚れ”と“力”の両方をコントロールすることが必要です。
これまでは、プラークコントロール(汚れの管理)、これからはフォースコントロール(力の管理)この両方が必要です。
歯にかかる力をコントロールするために、以下の3つが重要です。
歯ぎしりには、大きく分けて2つのタイプがあり、同じ歯ぎしりでも、種類によって対処法は全く変わります。
これは、睡眠が一時的に浅くなる「微小覚醒」のタイミングで起こると考えられています。また、以下のような特徴があります。
短時間でも強いダメージを歯に与えます。

日中に起こる歯ぎしりです。
主に2つあります。
強い力がかかるのが特徴です。
TCH・・・Tooth Contacting Habit)
弱い力だけど長時間続きます。
本来、歯はほとんどの時間、接触していません。
研究では1日の歯の接触時間は食事を含めても10〜20分程度です。
つまり口を閉じていても歯は触れていないのが正常です。
TCHのように2時間・3時間と歯が触れている状態が続くと以下のようなさまざまなトラブルの原因になります。
「歯は“強い力”にも“長い時間”にも弱い」
睡眠時と覚醒時の歯ぎしりは「別物」です。
歯ぎしりには、「睡眠時(寝ているとき)」「覚醒時(起きているとき)」の2種類がありますが、実はこの2つは原因・診断・対処法がすべて異なります。
主に睡眠が浅くなる「微小覚醒」のときに発生しており、体の反応として起こる現象です。
睡眠の質と関係している歯ぎしりです。
日中の「食いしばり」「TCH(歯の接触癖)」などが含まれます。
現時点では特定の生理的変化との明確な関係はないとされています。また、ストレス・姿勢・習慣などが影響します。
睡眠時と覚醒時では、以下のような違いがあります。
睡眠時の歯ぎしりを理解するためには、まず「睡眠の仕組み」を知ることが大切です。

さらに3段階に分かれます。
N1:うとうと状態
N2:軽い眠り
N3:深い眠り(最も重要)
睡眠の質やバランスは年齢とともに変わります。
睡眠:約16時間
レム睡眠:約50%
浅い眠りが多い
睡眠:約7〜8時間
レム睡眠:約20%
バランスが取れている状態
深いノンレム睡眠(N3)が減る
全体的に眠りが浅くなる
眠りが不安定になりやすい
歯ぎしりは、「眠りが浅くなるタイミング(微小覚醒)」で起こりやすいです。
つまり睡眠が浅くなるほど歯ぎしりが起こりやすくなる傾向があります。
「質の良い深い睡眠が、歯ぎしり予防にも重要です」
寝ている間、実は人は、何度も「一瞬だけ目が覚める状態」を繰り返しています。
マイクロアロウザル(微小覚醒)と呼びます。
マイクロアロウザルが起こると、「脳の活動が一時的に活発になる」「心拍数が急に上がる」「筋肉が動く(寝返りなど)」「体が一瞬だけ“起きた状態”」になります。
健康な人でも1時間に10〜20回ほど起こるのが普通です。
マイクロアロウザルが増えすぎると、睡眠の質が低下します。
歯ぎしりは、眠りが浅くなる瞬間に起こる現象で、ぐっすり眠れていないと、歯ぎしりは増えやすくなります。
歯ぎしりはこの「一瞬の目覚め」のタイミングで起こりやすいです。
つまりマイクロアロウザルが多いほど歯ぎしりも増えやすくなります。
睡眠中の歯ぎしりは、実は眠りが浅くなったタイミングで起こることが多いです。
歯ぎしりは主に浅い眠り(ノンレム睡眠 N1・N2)で発生します。
レム睡眠:約10%程度
深い眠り(N3):10%未満
深く眠っているときは、ほとんど起こりません。
朝方(起床前)に増える傾向があります。
この時間帯は眠りが浅くなりやすく、さらにマイクロアロウザル(微小覚醒)が増える時間帯です。
睡眠時歯ぎしりの約70〜80%は「マイクロアロウザルの直後」に起こります。
流れでいうと以下のようなセットで起こることが多いです。
「歯ぎしりは、ぐっすり眠れていないサインの一つです」
「歯ぎしりは“眠りが浅くなった瞬間”に起こります」
実は、歯ぎしりの原因はこれ1つ!という明確な原因はまだ分かっていません。
現在の考え方ではいくつもの原因が重なって起こる(多因子性)とされています。
眠りが乱れると歯ぎしりが増えやすいです。
神経が刺激されると起こりやすいです。
ストレスが強いと歯ぎしりが出やすいです。
遺伝的に起こりやすい人もいます。
人によって原因は違う
「歯ぎしりは1つの原因ではなく、いくつかの要因が重なって起こります。」
「歯ぎしりは“体と生活のサイン”です」
以前は「噛み合わせが悪いから歯ぎしりが起こる」と考えられていました。
そのため噛み合わせを治せば歯ぎしりも治るという治療も行われていました。
多くの研究から噛み合わせと歯ぎしりに明確な関係はないことが分かってきました。
歯がない方でも顎の筋肉は動いて歯ぎしりのような動きが出ます。
歯ぎしりは「睡眠が浅くなる」「自律神経が活発になる」というような脳・神経の働きによって起こります。
歯の接触は、以下ような流れです。
つまり、歯が当たるのは結果であって原因ではないです。
噛み合わせを治しても歯ぎしり自体は止まりません。
治療の目的は、「歯を守る(ナイトガード)」「負担を減らす」「生活習慣や睡眠の改善」です。
“歯ぎしりを止める”ではなく“ダメージを減らす”ことが重要です。
「歯ぎしりは噛み合わせではなく、脳と睡眠の問題です」
「歯ぎしりは“歯の問題”ではなく“体の反応”です」
歯ぎしりの原因はいろいろありますが、一番大切なのは「睡眠の質」です。

とてもシンプルにすると以下のような流れになります。
眠りが浅いほど、歯ぎしりは起こりやすくなります。
これらが重なると歯ぎしりが増えやすくなります。
「歯ぎしりは“歯の問題”ではなく“睡眠の問題”です」
「ぐっすり眠れると、歯ぎしりは減ります。」
起きている時にも、歯ぎしりは起こります。
例えば、「仕事中」「スマホを見ている時」「集中している時」は、無意識にグッと歯を噛みしめている状態です。

弱い力でずっと歯を触れさせているクセこれを、TCH(歯の接触癖)といいます。
本来、リラックスしている時は上下の歯は触れていません。(少し隙間があります)
しかしTCHがあると、ずっと歯が触れている状態になります。
強い力ではなくても長時間続くことで、歯や顎に負担がかかります。
気づかないうちに症状が出てきます。
主な原因は、ストレスや緊張による無意識の反応です。
「強い力」よりも「長く続くこと」が問題になる場合も多いです。
まずは「歯が触れていないか?」を意識してみてください。
それだけでも、負担を減らす第一歩になります。
歯には“反射”があり、無意識に噛む力が入ることがあります。
食事中に、砂や小さな骨をガリッと噛んだ経験はありませんか?
その瞬間、「危ない!」と感じる前に、パッと口が開きますよね。

これは何かというと体が自動で守る反応(反射)です。
歯や周りの組織を守るために、瞬時に噛むのをやめる仕組みが働いています。
しかし、逆の反応もあります。
実は歯には、弱い力が続くと、逆に噛む力が強くなる反射があります。
これを緊張性歯根膜咬筋反射といいます。
例えば、歯と歯がずっと軽く触れている状態(TCHなど)が続くと、「噛み続けなさい」という信号が筋肉に出てしまいます。
そして、さらに噛む力が強くなります。
つまり「軽く触れているだけ」が、だんだん強い食いしばりに変わることがあります。
無意識に“噛み続けるループ”に入ってしまうことです。
これが問題です。
歯は本来、リラックスしている時は触れていないのが正常です。
こんな経験ありませんか?
気づいたら歯をグッと噛みしめています。

体の「緊張モード」が関係しています。
体には2つの神経があります。
噛む筋肉も無意識に力が入ります。
一度噛みしめると以下の状態になります。
前に説明した“噛み続ける反射”が働きます。
無意識に以下のような形となります。
食いしばりはクセではなく「体の反応(防御反応)」の一種です。
大事なのは、「今、噛んでいないか?」と気づくことです。
日中の食いしばり(クレンチングやTCH)は、いろいろな要因が重なって起こります。
頭が前に出ると、噛む筋肉に力が入りやすくなります。
気づかないうちに歯を接触させる時間が増えます。

無意識にグッと噛みしめてしまいます。
違和感を補おうとして噛むクセが強くなります。
「どこか当たる感じがする」
その違和感が食いしばりのきっかけになります。
力を入れるときに歯を噛みしめやすいです。
一度噛みしめると、「筋肉が緊張する」「歯が接触し続ける」など、さらに噛む力が入りやすくなります。(悪循環)
日中の食いしばりは1つの原因ではなく、いくつも重なって起こるものです。
睡眠中の歯ぎしりは、原因によって大きく3つのタイプに分けられます。
体に特別な病気がないのに起こる歯ぎしりは、健康な方にもよく見られます。ストレスや睡眠の質が影響です。最も多いタイプです。

例:睡眠時無呼吸症候群、睡眠障害
体の問題が原因になっているケースです。
必要に応じて内科などと連携(対診)し、原因となる病気の治療が大切です。
例:一部の抗うつ薬、精神系のお薬
薬の副作用として出ることがあります。
原因によって対処法が全く違います。
歯ぎしりは「3つのタイプ」に分かれ、それぞれ対応が異なります。
日中の歯ぎしりには、主に2つのタイプがあります。
短時間でも強いダメージが出やすいです。

これが一番見落とされやすいです。
患者さんに「食いしばってください」と言うと強い力では「続けるのは無理です(疲れる)」となります。
でも、少し力を抜くと「これなら続けられる」となり、さらに聞くと「これは食いしばりじゃなくて、歯が当たっているだけ」となります。
たとえ弱い力でも歯が当たっていれば“負担”になります。
以下のような研究結果があります。
強い力=数分しか続かない
弱い力=2時間以上続くこともある
つまり、弱い力×長時間=大きなダメージとなります。
「弱い力で歯を当て続けるクセ」のことです。
クレンチング=強い力・短時間
TCH=弱い力・長時間(要注意)
本来、リラックスしているときのお口の状態は、上下の歯は触れていません。
前歯:約2〜3mmのすき間
奥歯:約0.5〜1mmのすき間
これを「安静空隙(あんせいくうげき)」といいます。

しかし一部の人では、約10%の方が「歯が離れていると違和感がある」と感じます。
本来はリラックスしているはずなのに、ずっと歯が当たっている状態になります。
これがTCH(歯牙接触癖)です。
しかも、「無意識」「長時間」なので、気づかないうちに続いてしまいます。
前かがみ(スマホ・PC)=歯が当たりやすい
背筋を伸ばす=歯が離れやすい
リラックスしているのに歯が当たっているのは“正常ではありません”。
「本来、安静時は歯は触れていません」
「触れているならTCHの可能性があります」
「気づいたときに“歯を離す”だけで、負担は減らせます」
通常は安静空隙が存在しているものの、ある状況あるいは環境下において上下の歯を当てて咬み続けてしまうことがあります。
このような状況は2次性覚醒時歯ぎしり(TCH)であるといえます。

普段は歯が離れているのに、ある状況になると歯が当たり続けてしまう状態です。
これを2次性のTCH(歯牙接触癖)といいます。

一番多い原因は、「姿勢や環境」です。
特に、以下のような時に起こります。
姿勢が悪くなると以下のような状態になります。
歯が当たると以下のような状態になります。
つまり、一度当たると止まりにくい(悪循環)となります。
「姿勢が悪いと、無意識に歯ぎしりが起こります」
「スマホ姿勢が“食いしばり”を作ります」
ストレスや集中が原因で起こる歯の接触クセです。
例えば、以下のような場面では、無意識のうちに歯が接触している可能性があります。

流れはシンプルです。
最近は特に以下のようなお仕事が多いです。
集中時間が長い=歯の接触が増えます。
長時間続くと、「眼精疲労」「頭痛」「首・肩こり」「腰痛」「メンタルの不調」そして歯やあごにも負担が蓄積します。
調査では約半数以上の人が強いストレスを感じています。
そして不安が強い人ほど、集中時に歯の筋肉が働きやすいです。
安静時は問題なくても、集中すると歯ぎしりが出ます。
「集中+ストレス=歯の接触が増える」
「頑張っている時ほど、歯は当たっています」
入れ歯が安定しないことで、無意識に噛んでしまうタイプです。
特に注意が必要なのは、奥歯がなく、しっかり噛める場所(咬合支持)がない場合です。

寝ている時(睡眠時)=差はあまりない
起きている時(覚醒時)=奥歯の支えがない人だけ、筋肉の活動が増える
問題は“起きている時”に起こりやすくなります。
「入れ歯が不安定だと、噛みしめるクセがつきます」
「入れ歯が動くと、無意識に噛んでしまいます」
「噛み合わせが気になる」ことが原因で起こるタイプです。
歯の当たり方に“違和感”を感じる状態です。
大きく2つあります。
① 狭い意味(咬合感覚異常)
実際には問題がないのに「当たりがおかしい」と感じる状態になります。
② 広い意味
「実際に噛み合わせがズレている場合」「問題がなくても違和感がある場合」は、両方含みます。

痛みがあると「噛み合わせの感じ方」が変わります。
「噛み合わせが気になるほど、歯は当たり続けてしまいます」
運動中に一時的に起こる「食いしばり」です。

体に力を入れると「関節を安定させる」「力を効率よく伝える」ために、一時的に噛みしめが起こります。
実はこれ無駄な食いしばりを防ぐための行動でもあります。
スポーツでの歯ぎしりは、強い力だが短時間だけです。
スポーツ=強い・短時間
TCH(普段のクセ)=弱い・長時間
「スポーツの食いしばりは基本的に問題になりにくいです」
「運動中の食いしばりは一瞬、問題は“日常のクセ”です」