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インプラントと喫煙(タバコ)

喫煙(タバコ)がインプラントに及ぼす影響

歯を失う方の中に喫煙をされている患者さまは非常に多いです。
喫煙者の患者さまからすれば、タバコがインプラントに影響するのか?と思われるかと思いますが、タバコはインプラントだけではなく体に100害があって一利なしです。

タバコの何が悪いかというと血流を阻害する、白血球の活動が抑制されるなどといわれていますが、私は、お口の中が乾燥することが一番良くないことだと思っています。
タバコを吸うことによってお口の中が乾燥します。唾液が減り、当然、汚れが流れ落ちない状態になります。
すると細菌が増殖し、インプラント周囲炎が起きやすい状態が続きます。

喫煙

他にもニコチンは、強い血管収縮作用があり毛細血管収縮させるため、インプラント周りの血管に血液が行かないことにより、インプラント手術後の治癒不全やインプラント周囲炎を引き起こします。
また、喫煙はビタミンCが失われます。ビタミンCは細胞の重要な物質代謝に関与し、コラーゲンの生成や維持に関わっているため、歯ぐきのコラーゲン生成や維持に問題が起こり、インプラント手術の傷の回復や手術後にも重大な問題が起こるリスクが高まります。

インプラント治療の成功率

インプラントと喫煙(タバコ)の文献を紐解く1

では、実際にインプラントと喫煙に関して研究した論文を紐解いてみましょう。喫煙(タバコ)がインプラントにどのくらいの影響をもたらすのかについて、数値から見ることが1番だと考えます。次の論文をわかりやすく要約し、説明します。実際の論文は、以下よりご確認いただけます。

論文:オッセオインテグレイドインプラントに対する喫煙の影響

山田陽一 新美敦 澤井俊宏 渡邊和代 日比野祥敬 中井英貴 本田雅規 藤本雄大 村上斎 山家誠 鈴木英治 粕谷幸生 松山実 小関健司 後藤康之 竹内学 川合道夫 小原仁 日比英晴 上田実
The Influence of Cigarette Smoking on Osseointegrated Implants
日本口腔インプラント学会誌 1997/06/30発行 第10巻 第2号 39-163~42-166

緒言

“喫煙は口腔粘膜,骨の創傷の治癒を遅らせる報告があるが,インプラントの定着と喫煙との関係に関する報告は少ない。本研究では,喫煙者と非喫煙者についてインプラントの定着状態を比較し,インプラントの骨結合に対する喫煙の影響を検討した.”

簡単にいうとタバコを吸っている人と吸っていない人とで、インプラントと骨が結合するか否かを比較した。

材料及び方法

対象の性別と年齢

  男性(人) 女性(人) 平均年齢(歳)
喫煙者(n=56) 47 9 54.8
非喫煙者(n=57) 17 40 51.4

成績

喫煙者と非喫煙者のインプラント脱落

非喫煙者のインプラント脱落率は、3.56%(347本中、12本脱落、10本非機能下)
喫煙者のインプラント脱落率は、7.14%(389本中、27本脱落、 11本非機能下)
と有意に高かった。

植立部位とインプラントの脱落

上あご喫煙者脱落率は、8.93%(175本中、15本脱落、7本非機能下)
上あご非喫煙者脱落率は、4.03%(131本中、5本脱落、7本非機能下)
下あご喫煙者脱落率は、5.71%(389本中、27本脱落、 11本非機能下)
下あご非喫煙者脱落率は、3.29%(216本中、7本脱落、3本非機能下)
と下あごより上あごの方が高かった。

インプラント脱落時期

喫煙者補綴後1年未満脱落率は、5.67%(175本中、15本脱落、7本非機能下)
非喫煙者補綴後1年未満脱落率は、2.91%(131本中、5本脱落、7本非機能下)
喫煙者補綴後1年以上脱落率は、1.62%(389本中、27本脱落、 11本非機能下)
非喫煙補綴後1年以上者脱落率は、0.77%(216本中、7本脱落、3本非機能下)
と被せ物セット後1年よりセット後1年未満の方が高かった。

インプラントの長さ

対象の性別と年齢

インプラント(mm) 7 10 13 15 18 20
喫煙者 5 7 84 116 88 42
非喫煙者 25 44 91 107 59 11

インプラントの長さと脱落の関係は、20㎜のインプラントを除いて、喫煙者の脱落率が非喫煙者よりも高い値を示した。

考察

  1. 脱落率
    喫煙者は7.14%で非喫煙者は3.56%だった。
  2. 植立部位別
    上あご、下あご共に喫煙者の方が非喫煙者に比較して脱落率が高かった。
  3. 脱落時期
    今回は被せ物を装着して1年未満でも1年以降でも、喫煙者の脱落率が非喫煙者の約2倍であった。
    本研究の結果から被せ物装着後1年未満においても喫煙者で脱落率が高いことを考えると骨とインプラントの骨結合喪失は、お口の中がキレイかよりも喫煙が阻害したと考えられる。
  4. インプラント長さ
    20㎜の本数の少なかったインプラントを除いて、15㎜、18㎜といった予知性の高いインプラントでも、喫煙者の脱落率は非喫煙者に比べリスクが高いことが推測された。
    したがって喫煙者においては長いインプラントを用いることができる十分な骨量がある症例でも定着率が低下することを理解して、慎重に適応症を選ぶ必要がある。

結論

インプラント脱落率は喫煙者で7.14%、非喫煙者で3.56%であり、喫煙者の方が約2倍脱落する確率が高った。

オッセオインテグレイドインプラントに対する喫煙の影響まとめ

喫煙者と非喫煙者ですが、単純にインプラントが失敗する確率は、2倍です。
なのでインプラントを行うにあたり喫煙は、リスク以外の何者でもありません。インプラントを行うのであれば禁煙をしましょう。
やはりタバコは、インプラントに百害あって一利なしです。

インプラントと喫煙(タバコ)の論文を紐解く2

次の論文をわかりやすく要約し、説明します。実際の論文は、以下よりご確認いただけます。

論文名:骨結合型インプラント治療の予後に対する喫煙の影響一文献的考察から一

著者:田部慎一, 日野出大輔, 横山正明,宮本洋二,中村亮
口腔衛生会誌 J. Dent. Hlth. 51 : 196-202, 2001

骨結合型インプラント治療の予後に関与する因子とは?

骨とインプラントを結合させる因子としては、表に示すように様々ある。
Espositoらは、インプラントの失敗は、内因性と外因性があり、さらに内因性は全身的要因と局所的要因に分けて説明しています。

  1. 脱落率
    喫煙者は7.14%で非喫煙者は3.56%だった。
  2. 植立部位別
    上あご、下あご共に喫煙者の方が非喫煙者に比較して脱落率が高かった。
  3. 年齢
    全身的要因のひとつとして年齢があり、加齢に伴って骨の無機成分の沈着やコラーゲン、骨形態形成タンパク質の生成が変化し、骨の治癒が遅延することをあげている。これはインプラント周囲の環境を変化させる可能性を示すものであり、実際60歳以下の患者では60歳以上の患者に比べて明らかにインプラントの予後が良かったことが報告されている。
  4. 糖尿病
    糖尿病は、代謝性疾患であるため微小血管病変をもたらし、好中球の走化性・貧食性機能の減少が感染の感受性を高めるため、インプラント周囲の治癒を遅せる可能性がある。実際にインプラント178本を植立した80人の糖尿病患者を対象とした研究で、1年後の失敗率は健康な人に比べて高かった。
  5. 局所的要因の骨質
    Lekholm ら10)は, 骨質を4つに分類している。この分類の中のタイプⅣは、皮質骨が薄く海面骨が疎な状態の骨です。Jaffinらは、タイプⅠ〜Ⅲの失敗率はわずか3%に対して、タイプⅣの失敗率は35%におよんだと報告している。さらに歯ぎしりの存在も骨の喪失を招くため、インプラント治療失敗の原因として考えられる。
  6. 歯ブラシ
    日々の歯ブラシは、もちろん重要になります。汚れが付いていればインプラント周囲炎になります。

骨結合型インプラント治療の予後に影響を与えると考えられる要因

内因性

A,全身的要因

・年齢
・全身疾患(糖尿病、骨粗しょう症、骨軟化症、上皮小体亢進症、ベーチェット病、クッシング症候群など)
・喫煙習慣

B,局所的要因

・骨質および骨量
・咬合に関する習癖(ブラキシズム)
・放射線療法
・骨移植

外因性

A,口腔衛生状態(アバットメント周囲のプラークコントロール)

B,インプラント治療の手技的要因

・術者の熟練度
・手術損傷の程度
・細菌感染
・インプラント植立本数,径,長さ,植立方向など
・治療期間
・荷重開始時期
・咬合状態(カンチレバーによる荷重ストレス,補綴物の摩耗など)
・上部構造の適合性

C,フィクスチャーなどの材料的要因

・材料の種類
・表面性状
・アレルギー

骨結合型インプラント治療の予後に関与する喫煙習慣

  1. 関連の一致性
    関連性の一致とは、方法や対象条件が異なっていても、インプラント治療開始時に喫煙者の方が非喫煙者に比べてインプラント失敗率が高いと報告されている。
  2. 関連の強固性
    喫煙はインプラント治療失敗のリスク因子として、オッズ比が1.46~6.11の高値を示すことが明らかになった。また、喫煙本数が多い集団と少ない集団に分けて、インプラントの周りの骨の吸収量を調べると喫煙量の多い集団で最も骨の吸収量が多かった。
    しかし、他の研究では、相関関係があまり認めらないこともあった。
  3. 関連の特異性
    喫煙習慣の有無がインプラント治療失敗に関与する他の要因に比べ、インプラント治療失敗とより密接に関連することである。
    Lindquistらは、インプラント喪失のリスクに関与すると考えられる要因とインプラント周囲骨吸収の関連性を多変量解析の手法を用いて調べ、喫煙はインプラント喪失のリスクと最も強い関連性を示すことを報告している。
  4. 関連の時間制
    Bainらは、インプラント治療を受けた3つの集団、すなわち非喫煙集団、インプラント治療開始と同時に禁煙開始集団、喫煙集団に分けてインプラント喪失の関連性を調べたところ、非喫煙集団と喫煙集団に有意差を認め、喫煙を中断した集団と喫煙を継続した集団にも有意差を認めた。
  5. 関連の整合性
    山田らは、喫煙によりニコチンとその代謝産物であるコチニンの局所的濃度上昇が末梢血管の収縮を起こし、炎症歯周組織の創傷治癒を遅らせることがインプラント定着率に悪影響を及ぼすと推測している。
    Gonzalezらは、臨床的にコチニンの局所的濃度上昇とアタッチメントレベル低下との間に正の相関関係が認められたことを報告している。

骨結合型インプラント治療後の予後に関する喫煙の影響
(各文献のオッズ比と寄与危険度割合)

調査機関(国名) 総インプラント本数
(喫煙者本数:非喫煙者本数)
オッズ比* インプラント喪失以外の失敗条件 寄与危険度割合
(%)
発表年 文献
ダルハウジー大学
(カナダ)
2,194
(390:1,804)
2.74 明らかな周囲骨吸収や動揺、痛み 23.6 1993 36)
歯周病&インプラントセンター
(ベルギー)
452
(108:344)
5.89 53.9 1994 37)
バテランス・メディカルセンター
(米国)
2,066
(646:1,420)
2.03 明らかな周囲骨吸収や動揺、痛み、不快感、炎症症状の存在 24.4 1994 38)
グラスゴー歯科大学
(英国)
210
(34:176)
2.21 インプラント長の51%以上の骨吸収 16.4 1996 39)
名古屋大学 715
(378:337)
2,08 明らかな周囲骨吸収や動揺、痛み 36.4 1997 43)
リーズ歯科研究所
(英国)
139
(64:75)
6.11 明らかな周囲骨吸収や動揺、痛み、不快感、炎症症状の存在 70.2 1998 44)
ペンシルベニア大学
(米国)
1,263
(295:968)
1.46 9.8 1998 45)
テキサス大学
(米国)
343
(126:217)
4.06 52.9 1999 40)
ロマリンダ大学
(米国)
228
(70:158)
2.76 明らかな周囲骨吸収や痛み、不快感、炎症症状の存在 35.1 1999 42)
ミズーリ大学
(米国)
116
(61:55)
3.60 57.8 2000 46)

*:喫煙者・非喫煙者のインプラント本数を対象として算出

まとめ

骨結合型インプラント治療の予後に対しても喫煙は重要なリスクファクターであると考え、その因果関係を関連文献より考察した。
すると①一致性、②強固性、③特異性、④時間性、⑤整合性のそれぞれの要因について検討したところ、全ての因子について両者間の関連性を肯定する結果が得られた。
つまり、喫煙習慣の存在がインプラント治療の失敗に関連していることが示唆された。

インプラント治療の失敗例

結合型インプラン ト治療の予後に対する喫煙の影響一文献的考察から一のまとめ

この論文は、喫煙とインプラントに関する様々な論文をまとめた内容です。
そこで様々な角度から論文を読み解いてみるとほとんどの論文において、喫煙はインプラント治療が失敗する確率が高いと述べています。
そのため、インプラント治療を受けられる全ての患者さまは、禁煙指導を受け、禁煙してからインプラント治療を受けた方が良いです。

インプラントと喫煙(タバコ)まとめ

喫煙者と非喫煙者のインプラント失敗率は、高いと6.11倍で低いと1.46倍です。インプラントの予後に関する因子は様々ですが、その中でも喫煙は最重要因子となります。
そのため、インプラント治療を受ける全ての患者さまが、禁煙することによりインプラント失敗を免れることができますので、是非とも、インプラント治療を機に禁煙されることをおすすめします。

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