2025年06月30日 2025年07月16日
Q
入れ歯は
医療費控除の対象となりますか?
A
・医療費控除とは?
医療費控除とは、1月1日〜12月31日までの1年間に支払った医療費が10万円以上200万円以下の場合に、医療費が還付される制度になります。つまり、支払った医療費に応じて所得税や住民税が還付されます。
・入れ歯も医療費控除の対象となります。しかし、いくつか条件があります。
1.保険適用、保険適用外問わず、医療費控除対象となります。ただし、保険適用の入れ歯だけでは、金額が満たないため、患者さまだけではなく、生活を共にする家族の医療費を合算し、1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合に申告できます。
2.1月1日から12月31日までに支払った医療費合計額を確定申告すると、所得控除を受けられます。(控除上限額:200万円)
3.歯科医院での自由診療でも治療を目的とした費用は、医療費控除対象となります。(審美目的は、対象外です)
4.公共交通機関を利用した通院のための交通費、または公共交通機関を利用した移動が困難な場合に限り、タクシー代も控除対象となります。
5.歯科医院で診療の際に発行された領収書は、大切に保管しておき、確定申告での提示・提出に備えましょう。
6.控除される金額に関しては、年収により様々となります。
その他、詳細に関しては、国税庁のHPでご確認ください。
国税庁のHPはこちら
目次
医療費控除とは?
医療費控除とは、高額な医療費を支払った際に一部を還付金として受け取ることができる制度です。
その年の1月1日から12月31日までの医療費の合計が、10万円以上200万円未満で、確定申告により所得税や住民税から医療費が差し引かれて、税金が還付される仕組みです。
保険診療だけではなく、保険外(自費)診療も医療費控除の対象となります。

入れ歯は医療費控除の対象か?
入れ歯は、保険内でも保険外(自費)診療のどちらでも医療費控除の対象となります。ただし見た目を良くするための審美目的ではなく、機能回復が目的である必要があります。
入れ歯を医療費控除で申請するためにも、治療費の領収書や通院の際に利用した公共交通機関の領収書や利用した際のメモを残しておく必要があります。

医療費控除の対象となる条件は?
- 所得税を支払っている方
- 1年間に支払った医療費が10万円以上(1年間の所得金額が200万円以下の場合は、所得金額の5%が対象となる。)
医療費控除は、所得税を支払っている方の還付や軽減を目的とした制度です。そのため所得税を納めていない人は、対象となりません。なお、家族で家計を共にする場合は、家族の中で所得税をたくさん支払っている方の確定申告に用いると還付や軽減が多く受けられます。
医療費控除の
対象となる歯科治療は?
- 虫歯治療の費用
- 歯周病治療の費用
- 銀歯、金歯、入れ歯などの補綴物の費用
- かみ合わせの改善などを目的とした歯列矯正(マウスピース矯正含む)の費用
- インプラント治療の費用
- 金属床の入れ歯、シリコン入れ歯、ノンメタルクラスプ入れ歯、コーヌス入れ歯
- 親知らずの抜歯
- 通院の際のバスや電車などの公共交通機関を利用した費用(幼児や高齢者の付き添い者の交通費も)
国税庁のサイトも参考にしてください。
国税庁のサイトをみる医療費控除の
対象外となる歯科治療は?
- 歯を白くして見た目を良くするためのホワイトニング
- 見た目を良くするための歯列矯正
(マウスピース矯正含む) - 見た目を回復するためのセラミック治療
- 入れ歯洗浄剤や入れ歯安定剤や入れ歯ブラシ
- 歯ブラシや歯磨剤やデンタルリンスなど
- デンタルローンの金利手数料
- 自家用車で通院時の駐車場代やガソリン代
- タクシーなどの公共交通機関以外の費用(電車やバスなどの公共交通機関が利用できない場合を除き、タクシー代は控除の対象となりません。と国税庁のサイトに記載があります。)
別途、国税庁のサイトも参考にしてください。
国税庁のサイトをみる
国税庁のサイトも参考にしてください。
国税庁のサイトをみる入れ歯で
医療費控除を受けるメリット
保険の入れ歯も保険外(自費)の入れ歯も、医療費控除の対象となります。治療後は、確定申告の際にしっかりと忘れずに申請する必要があります。申請することにより所得税や住民税が還付され軽減されますので、是非、活用しましょう。
税金の還付ができる
支払った所得税が還付される事が、1番の医療費控除の利点になります。また、支払った所得税の額に応じて、税金が還付されるわけですが、所得税だけではなく翌年の住民税も減額されます。
保険外(自費)の入れ歯は、自由診療なので金額も高額になります。そのため少しでも税金で還付できるように医療費控除を利用しましょう。

金銭的な負担を軽減できる
医療費控除は、所得税の還付だけではなく、他にも様々な金銭的な負担を軽減できます。
- 交通費 通常、歯科医院に通っても交通費はでませんが、交通費も医療費控除の対象となります。ただし自家用車での通院やタクシーでの通院は認められません。(バスや電車の公共交通機関が利用できない場合を除く)
- 家族の支払った医療費 生計を共にする家族が、支払った医療費も医療費控除の対象となります。なのでおじいさんおばあさんなどと二世帯一緒に暮らしている方にとって金銭的な負担を軽減できます。
-
デンタルローンや
クレジットでの支払い デンタルローンなどを利用した場合でも、その年に支払った金額に関して、還付を受けることができます。(金利や利息は対象外となります。)

5年前までさかのぼって申請できる
確定申告の期限が過ぎてしまっても安心してください。医療費控除は、5年間さかのぼって申請することができます。今からでも5年間はさかのぼって申請できますので、医療費控除を申請するのを忘れていた方は、領収書の再発行などを含めて思い出してみると良いです。

入れ歯で
医療費控除を受けるデメリット
入れ歯で医療費控除を受ける際にメリットだけでなく、デメリットもあります。会社で年末調整を行なっているので問題ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、別途確定申告をしなければならないなど、少し面倒な部分もあります。
すべての治療が対象とならない
保険の入れ歯も保険外(自費)の入れ歯も医療費控除の対象となりますが、例えば、審美目的でクラスプが見えないようなノンクラスプ入れ歯などは、対象とならない可能性があります。もちろんノンクラスプ入れ歯でも機能を回復するためであれば問題ない場合もあります。
対象となるならないは、非常に難しい部分ですので主治医の歯科医師に良く相談しましょう。

領収書の保管が必要
保険の入れ歯・保険外(自費)の入れ歯で支払った金額の領収書が、医療費控除を申請する際に必要となります。領収書は、5年間の保存義務があります。確定申告の際に領収書の提出は不要ですが、税務調査が入った際には、必要になりますので、大切に5年間保存しましょう。もし、なくしてしまった場合は、歯科医院に問い合わせをすれば、手数料はかかりますが、再発行してくれる場合もあります。

確定申告の手続きが難しい?
確定申告に慣れていない方がほとんどだと思います。通常は、年末調整ということで会社が行なってくれますが、確定申告は、自分で行わなければなりません。確定申告の期間は、2月16日〜3月15日になります。(祝日や土日の関係で期間が異なることがあります。)

医療費控除の計算方法は?
年収200万円未満の
医療費控除計算方法は?
年収(正確には「総所得金額等」)が200万円未満の方は、医療費控除の計算における「基準額」が変わります。
医療費控除の計算式(年収200万円未満)
医療費控除額 = その年に実際に支払った医療費の総額 - 保険金などで補てんされる金額 - 所得金額の5%になります。
例:年収120万円(給与収入)の人が、100万円の入れ歯治療を受けた場合 まず、年収120万円の給与所得者の場合
給与所得控除:55万円(2025年時点)
所得金額:120万円 − 55万円 = 65万円
次に控除額を計算: 医療費:100万円 補てん金:なし 所得金額の5%:65万円 × 5% = 32,500円 医療費控除額 = 100万円 − 0円 − 32,500円 = 967,500円
実際の還付額は?
医療費控除額:967,500円 所得税率:たとえば5%の場合 → 967,500円 × 5% ≒ 48,375円(概算の還付)
※住民税(10%程度)も後日軽減されることがあります。
年収200万円以上の
医療費控除計算方法は?
年収200万円以上の人の医療費控除の計算方法は以下の通りです。
医療費控除額 = その年に支払った医療費の総額 - 保険金などで補てんされる金額 - 10万円
例:年収300万円の会社員が、保険外の入れ歯治療で100万円支払った場合
年収:300万円
※ここでは簡易に「所得金額=年収−給与所得控除=200万円」と仮定
医療費:100万円 補てん金:なし 計算式 医療費控除額 = 100万円 − 0円 − 10万円 = 90万円
→ この「90万円」が課税所得から控除され、税額が減ります。
実際に戻る(還付される)金額は?
還付金額は、課税所得にかかる所得税率により異なります。例えば: 所得税率が10%の場合: 90万円 × 10% = 9万円(概算) さらに翌年度の住民税も軽減される可能性があります(約10%)。
入れ歯の医療費控除申請方法
医療費控除の申請に必要書類は、
以下になります。
- 入れ歯治療で支払った金額の領収書
- 銀行の口座番号
- 印鑑
- 通院の際の交通費のメモ・領収書
- 源泉徴収票
- 確定申告書(国税庁のサイトよりダウンロードできます。)
- 医療費控除の明細書
- マイナンバーカード
確定申告の期間は、毎年2月16日〜3月15日となっております。直接お近くの税務署に持っていくのもありですし、郵送でも可です。
確定申告書の作成方法
-
医療費の合計を集計する
・医療費を合計する。
・交通費を合計する。
・薬代を合計する。 - 確定申告書を入手する ・国税庁のサイトよりゲットする。
-
確定申告書に記入する
・医療費控除の欄に合計した額を記入する。
・所得金額や扶養家族の数も記入する。 -
提出書類の準備
・確定申告書
・治療費の領収書
・源泉徴収票
・交通費の関するメモ -
税務署への提出
・最寄りの税務署を確認する。
・窓口に持参する。
・郵送で送る。
・e-Taxで提出する。
医療費控除の提出方法
医療費控除の提出方法には、以下の方法があります。
- 税務署の窓口に直接提出する
- 税務署に郵送する
- 税理士が代理人として提出する
- e-Taxのサイトから提出する
- 源泉徴収票
現在は、以上の4つの提出方法があります。ご自分に合った方法で期日内に提出しましょう。
医療費控除の提出期限
医療費控除の提出期間は、毎年2月16日〜3月15日となっております。ただし、社会情勢の変化や地震などで提出期限が延長される場合もあります。
もし、提出期限が過ぎてしまった場合も5年をさかのぼって申請する事ができるので安心です。入れ歯の保険外(自費)診療は、高額な場合が多いですので、申請すれば家計の負担も間違いなく減ります。
入れ歯をデンタルローンなどで支払った場合の医療費控除は?
デンタルローンやクレジットで入れ歯の費用を支払った場合は、どうすれば良いのか?と相談されることがあります。
デンタルローンやクレジットで支払った場合は、その年の1月1日〜12月31日までに支払った金額を医療費控除として申請します。下に例を出します。
入れ歯保険外(自費)の総費用は、100万円です。デンタルローンを用いて購入しました。
- 借入金額:1,000,000円
- 返済期間:3年(36ヶ月)
- 金利:5%
- 月々の返済額
金利分:1,000,000円 × 0.05 ÷ 12 = 4,166.67円
元本分:1,000,000円 ÷ 36ヶ月 = 27,777.78円
月々の返済金額:27,777.78円 + 4,166.67円 = 約32,000円
となります。デンタルローンの場合、毎月の返済金額ではなく、ここから金利手数料を引いた金額の申請となりますので、ご注意ください。
入れ歯の医療費控除は医療費の負担を軽くする?
ここまで読まれた患者さんなら間違いなく、入れ歯の医療費控除は、医療費の負担を軽くする事ができます。
保険外(自費)の入れ歯は、高額な場合が多いので、所得が多ければそれなりに所得税や住民税の還付となります。
保険の入れ歯は、型採り〜完成まで3割負担で約3万円くらいですので、医療費控除を申請しても、そこまで大きく家計の負担を軽くすることはできませんが、チリつもですし、家計を共にする方がいらっしゃれば、その合計額になるので、家計の負担を減らすことができると思います。
入れ歯の装置としてインプラントを行った場合は?
インプラントは医療費控除の対象ですか?と聞かれることが非常に多いです。入れ歯は、医療費控除の対象となるが、インプラントは、どうなのか?迷われる方がいます。基本的にインプラントは、医療費控除の対象となりますので、入れ歯タイプのインプラントであったとしても医療費控除の対象となりますので安心してください。インプラントの場合は、審美目的で行われる事は少なく、機能回復を目的として行うので、医療費控除として認められるケースがほとんどです。

田中 健久
Takehisa Tanaka
入れ歯なんでも相談室をご覧頂きありがとうございます。渋谷にて開業して20年以上経ち、多くの患者さまにご来院頂いたことを感謝申し上げます。
私は、日本補綴(かぶせ物・入れ歯)歯科学会と日本口腔インプラント学会の両方の専門医を取得しています。そのため入れ歯とインプラント両方の専門医として皆さんの相談に答える事ができます。両方の学会の専門医を取得している歯科医師は、非常に稀です。
よくインプラントは良くない!入れ歯は噛めない!などとおっしゃりますが、私の意見としては、それぞれ利点・欠点があり、患者さまによって全然違います。なのでそれぞれ自分に合った治療方法は、何かを理解した上で治療方針を決定すべきだと考えております。
両サイドから相談にのる事ができますので、どうぞお気軽に相談してください。
【所属学会・資格】
- 日本補綴歯科学会 専門医
- 日本口腔インプラント学会 専門医
- 日本顎咬合学会 咬み合せ認定医
- 日本歯周病学会
- 日本臨床歯周病学会
- *スタディグループ
- 5DJapan-DentureCourseSaporter
【経歴】
- 1999年:岩手医科大学卒業
- 2004年:東京医科歯科大学大学院卒業
- ニューヨーク大学インプラント審美卒後研修修了
- ペンシルバニア大学卒後研修修了
- テンプル大学大学最新歯科治療コース修了
- ブカレスト大学医学部インプラント科卒業
- ハーバード大学インプラントプログラム修了
- いいやま歯科医院:勤務
- 青山通り歯科タナカ:院長
- 渋谷歯科タナカ:院長
- 医療法人社団まる歯:理事長